離婚手続

離婚に関わる法律上の問題を簡単に解説します。

(1)離婚手続:離婚手続の種類や、調停・審判・裁判の申立て方法等について。

(2)財産分与と慰謝料:財産分与と慰謝料の違いや、額の算定・時効時期について。

(3)親権者と監護者:親権者や監護者の役割や決定方法等について。

(4)養育費:養育費の算定方法や支払時期・方法等について。

()離婚手続

協議離婚調停離婚審判離婚裁判離婚4種類があります。

◇協議離婚

協議離婚は、夫婦双方が離婚に合意し、離婚届書を市区町村または町村役場に提出することで成立します。その際に留意すべき点として以下3点があります。

@   親権者の決定:未成年の子どもがいるとき、子ども一人一人につき夫婦のどちらが親権者になるかを決めなければなりません。夫婦間で話がまとまらないときは、家庭裁判所に申し立てて親権者を指定してもらうことができます。

A   戸籍の決定:結婚によって姓を変更した配偶者は、離婚によって夫婦の戸籍から除かれるため、元の戸籍に戻るか新しい戸籍をつくるかを決める必要があります。この時、結婚前の姓に戻すか、配偶者の姓を名乗るかは当事者が自由に選択することができます。ただし、離婚後も継続して配偶者の姓を名乗る場合には、離婚の日から3ヶ月以内に、区役所等の戸籍課等にその旨の届出を行わなければなりません。

B    記載の方法:離婚届出書を記入する際に、本人および証人の署名・押印は本人が行う必要がありますが、それ以外の欄は誰が書いてもかまいません。万が一、本人の知らぬ間に代筆し、離婚届けを提出した場合には、私文書偽造罪にあたり刑事罰が科せられることもあります。

◇調停離婚

調停離婚では、夫婦の一方が協議離婚に合意しない場合に、家庭裁判所に申立て、調停委員を介した話し合いを行うことで、離婚原因や財産分与、子どもの親権等、離婚に付随する取り決めを行います。

@    申立手続:申立ては、まず相手方住所地または合意で決めた家庭裁判所に行き、所定の申立書に本籍や住所、連絡先、離婚の原因、財産分与の額、慰謝料、子の親権の帰属、子の養育費等を記載します。次に、戸籍謄本等と、収入印紙900円、呼出のために必要な郵便切手(約800円)を申立書に添付し、家庭裁判所に提出することで申立てが完了します。

A    調 停:申立てから1〜2ヶ月後位に第1回調停期日が開かれ、調停委員(男女各1名)が間に入り離婚原因や財産分与、子の親権等につき話し合いが行われます。家庭裁判所の調停は非公開で行われ、夫婦が顔を合わせないですむように、待合室は別で用意されています。財産分与や慰謝料の額等、金銭的な話し合いの場合には、代理人のみの出頭が認められますが、離婚の成立に際しては、本人の出頭が必要です。調停の審理期間は、事件受付後6ヶ月以内に結論がでているケースが多いですが、1,2年かかるケースもあるので、数ヶ月はかかると心得ていて下さい。

B    調停成立:調停での話し合いの結果当事者双方が離婚に合意した場合に調停が成立します。調停で決まったことは調停調書に記載され、「申立人と相手方は、本調停により離婚する」と記載された時に離婚が成立します。この調書は裁判における判決書に相当し、不服申し立てによる調停のやり直しを求めることができません。

C    離婚成立:離婚調停が成立し、調停調書に記載されたときに離婚は成立しますが、戸籍への届出は必要です。このとき、調停を申立てた者が、夫婦の本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に、届書と戸籍謄本、調停証書の謄本を提出しなければなりません。届書は協議離婚と同じ離婚届用紙で役所に備えてあります。この場合は、夫婦および証人2名の署名・押印は必要ありません。

◇審判離婚

審判離婚は、一方が離婚を承知しなくても、家庭裁判所が独自の判断によって離婚を宣言する方法です。調停を重ね、離婚を成立させた方が当事者のためであるとみられるにもかかわらず、合意の成立する見込みがないとき、家庭裁判所が、調停委員の意見を参考に、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、双方に公平な結果になるよう離婚その他の処分(親権者の決定、財産分与、慰謝料の決定)を職権でおこなうことができます。この審判により離婚が成立します。

@    不服申立:この審判に対しては、2週間以内に当事者や利害関係人から簡単に異議の申立ができ、異議申立に理由があるかないかを問われず、即座に審判の効力が失われます。

A    離婚成立:2週間以内に不服申立がないときには、その審判は確定し、離婚が成立します。この場合にも戸籍への届出が必要です。この手続きは調停離婚と全く一緒ですが、添付書類として、審判確定証明書と審判書謄本が必要です。

◇裁判離婚

調停を通しても離婚の合意に至らなかったときに、地方裁判所に離婚訴訟を起こし判決によって離婚を確定するのが裁判離婚です。調停の申立てとは異なり、訴状から作成するなど専門的な知識が必要となるため、弁護士を代理人に立てて裁判を起こすのが妥当といえます。

@      訴えの要件:裁判を起こすためには、以下2つの要件を満たさなければなりません。

  ◇既に離婚調停を行っていること;調停前置主義といわれ、まずは、調停での話し合いを行い、それでも合意に達しない場合の最終手段として裁判所に訴えることができ   ます。

◇法定離婚原因があること;以下5つの内、1つ以上該当する必要があります。

◆配偶者に不貞な行為があったとき(浮気等)。

◆配偶者から悪意で遺棄されたとき(生活費を入れない、正当な理由なく別居する等)。

◆配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

◆配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

  ◆その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき(暴行や虐待,勤労意欲の欠如,親族との不和,性的異常等)。

    有責配偶者による離婚請求が認められるかという点につき、原則として、夫婦が相当の長期間別居し、その間に未成熟の子がおらず、相手方配偶者が過酷な状態に   おかれない場合には認められる場合があります。相当の長期間の判断基準については、およそ8年を超える時と考えられます(過去の判例より)。また、未成熟の   子がいながら離婚請求を認めた事例もあります。

A      申立裁判所:夫婦が生活していた場所を中心に、順位を付けて複数の管轄が認められています。

1.夫婦が共通の住所を有するときはその住所地の地方裁判所。

2.同居していない場合、最後の共通の住所地の地方裁判所の管轄区域内に夫または妻が住所を有するときはその地方裁判所。

3.2の管轄区域内に夫も妻もすでに住所を有しないとき、または夫婦が共通の住所を有したことがないときは、夫または妻の現在の住所地の地方裁判所。

B      訴訟費用:通常、訴訟に負けたほうの負担になります。

  ◇裁判所への手数料:裁判所に納める手数料は、訴状に収入印紙を貼って納めます。調停のように手数料の額は一律ではなく、訴えの内容によって異なります。離婚請求  (親権者の指定を含む)だけなら、訴訟の目的物の価額を95万円とみなし、手数料は8200円です。離婚とともに財産分与の申立てをするときは、900円を加算します。慰   謝料を併せて請求するときは、請求する慰謝料額と前記95万円を比較し、多額の方を基準に手数料を算出します(慰謝料の請求額が95万円以下のときは手数料は8200   円ですが、例えば500万円の慰謝料を請求するときは32600円となり、財産分与の申立ての印紙900円を併せて納めることになります)。また、裁判所からの書類の伝達   や呼出しのための費用を郵便切手で予納しますが、額は1万円前後で、訴訟終了時に余剰分は返還されます。

◇証人の旅費や日当:必要に応じて納めます。

C 弁護士費用:弁護士に委任した場合の弁護士手数料や報酬は、訴訟費用とはみなされないため当事者の自己負担となります。弁護士費用は、着手金と成功報酬という  2本立てになっており、それぞれ40万円から60万円が目安です。同じ弁護士に調停と訴訟を依頼する場合は、訴訟の着手金は2分の1の額となります。但し、財産分  与や慰謝料を請求する場合は、その具体的内容により額が異なりますので、弁護士と相談する必要があります。

D 離婚成立:裁判離婚では、判決が確定したときに離婚が成立します。一審判決で離婚が認められても、控訴→上告という不服申立がなされる間は、離婚が成立しませ  ん。訴えを提起した者は、判決確定時に判決確定証明書と判決謄本の交付を受け、確定した日から10日以内にその書類を添付して、戸籍係りに離婚の届出をしなけれ  ばなりません。

(2)財産分与と慰謝料

  離婚に際に必ず問題となるのが夫婦間で共有していた財産をどのように分割するか、また慰謝料をいくら請求できるのかということです。財産分与と慰謝料は別個の性  質をもっており、両方を併せて請求することも可能です。民法の規定により、夫婦の一方は相手方に対して財産の分与を請求することが認められているため、離婚する  際には必ず財産分与の問題が発生します。これに対し、慰謝料とは、離婚原因が精神的苦痛を及ぼした場合に、相手方に対して損害賠償を求めることができるというこ  とです。こういった問題は、夫婦間の話し合いでは決着がつきにくいため、弁護士等の代理人を間に立てて話し合いを行うケースが多いといえます。そこで、以下では  、財産分与慰謝料について詳しく解説していきます。

◇財産分与

  財産分与とは、結婚生活中に夫婦の協力によってつくられた財産を公平に分配することと、生活の不安をきたす側の配偶者を扶養し、その暮らしの維持を図ることを目  的になされます。よって、結婚に際して実家からもらった財産、結婚前に自分で貯えた財産、結婚前または婚姻中に自分の親族が死亡したことによって取得した相続財  産等は固有財産にあたり、財産分与の対象外となります。

@    分与財産:財産分与の対象となる財産は大きくわけて二つあります。

◆婚姻中、夫婦の共同名義で購入した財産や共同生活に必要な家具等。

◆名義人は夫(妻)の一方であるが、実質的には夫婦の共有とされる財産。

ex,夫婦で協力して取得した不動産、有価証券(株券、国債等)、貯蓄、車等。)

 ※退職金も財産分与の対象となります。既に受領済みか、あるいは近い将来に受領する予定の退職金が含まれます。

A    分与割合:通常は共有財産を夫婦ともに1/2に分割するというのが原則でしょうが、財産の形成過程にどのくらい貢献しているかということで評価される場合もあります。家庭裁判所の審判例では、妻の寄与割合を、専業主婦の場合に10%〜30%、共稼ぎ又は家業に従事している場合に25%〜50%認める例が多くみられます。

B    請求時期:離婚前はもちろんのこと、離婚成立後に財産分与の請求をすることは可能です。但し、財産分与を離婚後に請求する場合、時効は離婚成立日から起算して2年です。それ以後請求することはできません。<TOP

◇慰謝料

  慰謝料とは、配偶者が離婚によって蒙る精神的苦痛に対する損害賠償を意味します。従って、相手方の有責行為(不貞行為、暴力行為、虐待行為などによる離婚)が必  要で、それが認められる場合に慰謝料の請求ができます。

@    額の算定:調停・裁判の慰謝料額は、主に、以下の点を評価対象として算定されます。

1.  婚姻破綻の原因 と申立人・相手方(原告・被告)の有責割合。

2.  共有財産の額。双方の収入や生活状況、子供の帰属状況等。

3.  婚姻期間中の同居期間・別居期間。

A    請求時期:財産分与と同様、慰謝料の請求は離婚成立前でも成立後でも可能です。但し、慰謝料を離婚後に請求する場合、時効は離婚成立日から起算して3年です。それ以後請求することはできません。

  ※離婚の原因が不貞(浮気)にある場合、有責配偶者のみならず、肉体関係を持った愛人にも慰謝料を請求することができます。但し、婚姻関係が実質的に破綻した後  に、有責配偶者と愛人が肉体関係を持った場合には慰謝料を請求することはできません。

(3)親権者と監護者

  親権とは、未成年の子どもの身上監護権(義務)財産管理権(義務)を意味します。身上監護権は、子どもの身の回りの世話をしたり、しつけ・教育をしたりするこ  とです。財産管理権は、子どもが自分名義の財産をもっているときや、何らかの法律行為をする必要があるときに、子どもに代わって契約したり財産の管理をすること  です。未成年の子どもがいる場合には、必ず親権者を決めなければならず、親権者が決まらなければ離婚は成立しません。

@    親権者の決定:原則として夫婦間の話し合いで親権者を決めます。万が一話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に親権者指定の調停を申立て、調停又は審判で決定することになります。裁判離婚の場合には、裁判所が親権者を決定します。妊娠中で、子どもが生まれる前に離婚するときは、生まれた子どもは母が親権者になることとなっています。但し、出世後に、父母の協議によって父を親権者に定めることも可能です。

A    監護者の決定:監護者とは、子どもの身の回りの世話、保育だけをすることです。つまり、法定代理人としての役割は親権者が行い、子どもの世話は監護者であるもう一方が行うということを取決めることができます。監護者は離婚届に記載する義務はありません。

B     姓の変:子どもの親権を持った方が、離婚に際して自らの姓を旧姓にもどしても、子どもの姓は依然として相手方の姓のままです。自分の姓を名乗らせるためには、子どもを自分の戸籍に入れ、かつ家庭裁判所に「子の氏変更許可申立書」を提出しなければなりません。

(4)養育費

  親は未成熟の子どもを成人に達するまで扶養する義務(生活保持義務)があるため、離婚後も、養育費は親として当然に分担しなければなりません(養育費分担義務)。  よって、失業や事業不振、ローンその他の負債・借金等を理由に支払いができないということは認められません。また、養育費の取り決めに際して、「子供の養育費は   以後一切請求しない」という請求権放棄の合意を離婚協議書に記載しても、不適法な合意とされ、一般的には効力はないとされます。

@    養育費の額:養育費を支払う者の収入によって異なりますが、子ども1人2〜4万円、子ども2人4〜6万円、子ども3人5〜7万円が一般的のようです。

A    支払い期間:通常は成人(満20歳になる)までですが、4年生大学へ行くことを前提として22歳までという取決めをすることも可能です。

B    支払い方法:一般的には、毎月定めた期日に、金融機関の子名義の口座に振込む方法が多くとられています。一括して養育費を支払うこともできます。

C    額の変:養育費を取決めた離婚時に予測し得なかった個人的、社会的事情の変更があると認められる場合には、養育費の増額又は減額の請求ができます。個人的事情とは、父母の勤務する会社の倒産による失業、親や子の病気、ケガによる長期入院等です。社会的事情とは、物価の急激な上昇による養育費の増大等、物価変動や貨幣価値の変動があった場合をいいます。但し、増額の請求が認められるためには、相手方にそれに応じるだけの経済的余力があることが必要となります。

   以上に解説したこと以外にも、離婚に際しては様々な問題が生じます。夫婦間で納得のいく取決めができればそれにこしたことはありませんが、そう簡単にいかないのが  世の常です。離婚を急ぐあまりに、不本意な条件を受け入れてしまう人もいるようですが、請求すべき権利を放棄することがないように、まずは弁護士等の専門家に相談  し、妥当な解決策を見出すことをおすすめします。


◆配偶者に不貞な行為があったとき(浮気等)。

◆配偶者から悪意で遺棄されたとき(生活費を入れない、正当な理由なく別居する等)。

◆配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

◆配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

   ◆その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき(暴行や虐待,勤労意欲の欠如,親族との不和,性的異常等)。

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