成年後見制度とは、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者など精神上の障害によって判断能力が十分ではない方を保護・支援するための制度であり、公的な援助者が、本人に代わって財産管理や身上監護などを行うことが可能になります。以下、その制度について解説していきます。
(2)任意後見制度:法定後見制度との違いについて説明します。
(3)申立て手続き:申立てに必要なものや手続きの流れについて解説します。
法定後見制度は、本人の判断能力の重度に応じて、『後見』、『保佐』、『補助』の3類型からなり、親族等の請求者が法定後見開始の審判を申立て、家庭裁判所によって適任と思われる援助者が選ばれます。
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保 佐 |
補 助 |
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判断能力 |
全くない |
著しく不十分 |
不十分 |
鑑定等の要否 |
必 要 |
必 要 |
不 要 |
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開始手続 |
請求権者 |
成年後見監督人等、検察官、任意後見受任者、 任意後見人、任意後見監督人、市町村長
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本人の同意 |
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不 要 |
必 要 |
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名称 |
本人 |
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被保佐人 |
被補助人 |
成年後見人等 |
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保佐人 |
補助人 |
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成年後見監督人等 |
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保佐監督人 |
補助監督人 |
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同 意権・取消権 |
付与の範囲 |
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民法12条1項所定の行為 |
特定の法律行為(民法12条1項の一部) |
付与の審判 |
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不 要 |
必 要 |
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本人の同意 |
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不 要 |
必 要 |
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取消権者 |
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本人、保佐人 |
本人、補助人 |
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代理権 |
付与の範囲 |
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特定の法律行為(申立ての範囲内) |
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付与の審判 |
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必 要 |
必 要 |
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本人の同意 |
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必 要 |
必 要 |
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一般的責務 |
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※民法21条1項所定の行為
1. 元本を領収し又は利用すること
2. 散財又は保証を為すこと
3. 不動産又は重要なる動産に関する権利の得喪を目的とする行為を為すこと
4. 訴訟行為を為すこと
5. 贈与、和解又は仲裁契約を為すこと
6. 相続を承認し又はこれを放棄すること
7. 贈与もしくは遺贈を拒絶し又は負担付きの贈与もしくは遺族遺贈を受諾すること
8. 新築、改築、増築又は大修繕を為すこと
9. 短期賃貸借に定めたる期間を超える賃貸借を為すこと
任意後見制度は、精神上の障害により判断能力が低下した場合に備えて本人があらかじめ契約を締結し、任意後見人となるべき者やその権限の内容を定めることができる制度です。契約の効力は、本人の判断能力が補助、保佐、後見のいずれかに該当する程度に不十分な状態になった場合に、家庭裁判所が任意後見人を監督する監督人を選任し発生します。任意後見人には、契約で定められた代理権のみが与えられます。また、本人の意思を尊重する観点から、契約の効力を生じさせるに当たって、本人の申立てまたは同意が必要とされています。
成年後見制度の利用手続きを説明します。
@申立て:本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「法定後見開始の申立てまたは任意後見監督人選任の申立て」をします。
申立てができる者は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官(法定後見のみ)、任意後見人、任意後見監督人、市町村長(法定後見のみ)などです。
A必要書類:申立て及び審判手続きに必要なものは以下の通りです。
◆ 申立書(必要事項を記入したもの)
◆ 600円分の収入印紙(申立て手数料)
◆ 4000円分の登記印紙
◆ 4300円の郵便切手(内訳:500円切手5枚、80円切手20枚、10円切手20枚)
◆ 申立人の戸籍謄本1通
◆ 本人の戸籍謄本及び戸籍附票各1通
◆ 成年後見人等候補者の戸籍謄本,住民票,身分証明書(*1)
◆ 成年後見に関する登記事項証明書(*2)
◆ 診断書(鑑定料よりは低額です。)
◆ 鑑定書(後見、保佐の場合にも必要。鑑定料は5〜20万円程度のようです。)
(*1)申立人、本人又は保佐人候補者が外国人の場合には、戸籍謄本,戸籍附票,住民票又は身分証明書に代えて外国人登録の証明書が必要です。
(*2)保佐人候補者が法人の場合には、該当法人の商業登記簿謄本が必要です。
B審判手続:家庭裁判所の調停員が本人の状況に関する調査を行います。必要に応じ、家事審判官(裁判官)が直接事情を尋ねます。
C審判確定:申立てについて、家庭裁判所の判断が出されます。
D告知・通知:審判結果については、本人に告知または通知され、成年後見人などとして選任された方にも告知されます。(告知後2週間後に審判が確定します。)
E登記:確定した内容は、法務局に登記されます。但し、審判内容は戸籍には記載されません。