インターネットでの売買契約の問題について
インターネットの発展と普及により、欲しいものが簡単に買えたり、好きなときに買えたりなど、インターネットショッピングが大変便利なものとなってきました。しかしその反面、簡単に売買契約が成立してしまうため、うっかりミスで購入を申し込んだり、あるいは申し込みをメールでしたのに、ちゃんと届いていなかったなど、インターネット契約だからこその問題が生じてしまうということも発生してします。このような問題に対処するため、近年ではインターネット関連の多くの法律が作られています。ここでは、それぞれのケースに分けて紹介したいと思います。下から、状況によって選んでみてください。
操作ミスによる売買契約トラブル
→こちら(電子消費者契約および電子承諾通知に関する民法特例法)
契約承諾の通知に関するトラブル
→こちら(電子消費者契約および電子承諾通知に関する民法特例法)
電子消費者契約および電子承諾通知に関する民法特例法
ここでは、インターネットで契約を行う際に操作ミスを行った場合について取り扱います。
例:購入数量を記載する欄に2個と書こうとしたのを誤って20個と書いてしまった。 例:クリックを2回してしまったために、注文が2個となってしまった。 |
などといった場合です。このような操作ミスについては、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」で、事業者が操作ミス防止策を講じていなかった場合は、どのような操作ミスの場合でも契約を無効とすることができる。と規定されました。
つまり、サイトを運営している事業者側が、消費者の申込後に入力確認ができるようなページを設置する、あるいは確認の画面等が出るようにしていなければ、消費者は契約をいつでも無効とすることができます。(消費者が自ら確認作業を必要としない意思表示をした場合は無効にはできません)
ただし!
そのような確認のページが表示されているのにもかかわらず、消費者がしっかりと確認することを怠れば、契約を無効にすることはもはやできません。自分の入力した内容について注意を払わなければならない、という注意は心がける必要はあります。
・何が変わったか?
従来の民法の規定と何が変わったのでしょうか。民法上では、操作ミスは錯誤(民法95条)として取り扱われます。しかし、民法の錯誤が認められるためには、重大な過失がない場合、という限定がされています。実際には、重大な過失がなかった、ということを消費者側が証明するのはなかなか困難です。そこで、消費者保護の観点から、電子商取引の場合には重大な過失がない場合という条件をなくそうとしたのが今回の特例法の趣旨です。
民法95条 |
電子消費者契約特例法3条 |
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ここでは、契約の承諾の通知の到達に関する取り扱いについて取り扱います。ここで、気をつけていただきたいのが、契約承諾とは何か、です。従来より、契約の申込と承諾の関係については多くの議論がありますが、ここでは前提として、消費者による購入の意思表示を申込、それに対する事業者の返答を承諾として取り扱います。
例:ある商品の購入希望をeメールで送信した。しかし、申込先事業者Aから何も返事がこなかった。近日中に必要な商品だったので、急遽別の事業者Bの商品の購入契約を結んだ。ところが後日、当該商品が両事業者から送られてきてしまった。どうやら、A社は受注確認のメールを発信していたらしい。A社の商品に対して、代金を支払う必要はあるのだろうか? |
契約が成立する時期というのはいつでしょうか。「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」では承諾の通知が到達したときとされています。つまり、“注文承りました”などといった承諾の通知が申込者側の手元に届いたときということが規定されたことになります。
上記の例ですと、到達主義に基づいて売買契約は不成立ということになります。つまり、代金を支払う必要はありません。承諾の通知が到着しなかった場合のリスク(この場合ですとたとえば送料負担や商品調達の費用など)は事業者が負担することになります。
・何が変わったか?
従来、遠隔地の契約の申込、承諾は手紙という時間がかかる手段が主でした。しかし、現在ではインターネットのページ上、eメールによる通知、ファックスなど、通知の発信と同時に相手に通知が到達するという電子的な手段によって迅速な通知到達が可能となりました。そこで、契約成立時を従来は通知発信時としていた(発信主義:民法256条1項)のを、通知到達時とすることになりました(到達主義:電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律4条)。
なお、従来の発信主義ですと、上記の例の場合、素直に解釈すると売買契約は成立することになります。つまり、購入者は契約解除できる理由がない限り、代金を支払わざるをえません。そのため、民法256条1項については解釈上、発信主義と到達主義の議論が盛んでした。特例法ができたことによって、この対立に一定の答えが出されたというわけです。
民法256条1項 |
電子消費者契約特例法4条 |
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(発信主義) |
(到達主義) |