電子公告制度の導入について                      2005/1/26


 平成16(2004)年、商法の一部が改正され、電子公告制度が導入されました(正式名称:「電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律」)。施行は平成17年2月1日からとなっています。
 この改正のポイントは大きく2つ存在します。電子公告制度導入と債権者保護手続きの簡素化です。改正の目的は、「株式会社等の公告をインターンネットによって行うことを可能とするとともに、合併、資本減少などの際の債権者保護手続を簡素化することにより、会社等の運営の合理化及び効率化を図る」(法務省ホームページより)こととされています。


1.電子公告制度

電子公告制度の導入

 「会社の公告」とは、株式会社が、基準日※1や新株発行事項、株主が新株引受権※2を有することなどを、一般の不特定多数者に伝達することを言います。従来は、この公告の方法は官報か時事に関する日刊新聞紙を通じてのみ行うことが可能でした。平成16年の改正では、この公告を官報や日刊時事新聞紙の代わりにインターネット上で行うことが可能になりました(電子公告制度、商法166条第6項)。電子公告を行う会社は、定款にその旨を記載することが必要になります(商法166条第1項9号)。同時に商業登記簿に記載する必要もあります(登記事項、商法188条2項)。

※1:基準日とは、株主を確定する必要がある際に、その株主を株主名簿上の株主に確定する日を示します(商法224条の3第1項)。その公告は、基準日の2週間前にしなければならないとされています(商法224条の3第3項)。
※2:新株引受権とは、新株が発行される際に、既存の株主が持ち株比率に応じて新株を引き受ける権利を示します。既存株主の新株引受権を排除して新株を発行すると、持ち株比率が変動して運営権限に影響が出ることになってしまうので、公告を行う必要があります。

現在、会社の電子公告は以下のサイトなどで入手可能です(必ずしも全ての会社の情報を入手できるものではありません)。
インターネット版官報:http://kanpou.npb.go.jp/
日経新聞:http://ir.nikkei.co.jp/
 なお、公告アドレスへのアクセスを容易にするために、電子公告リンク集サイト(仮称)の設置が法務省によって検討されています。

電子公告調査機関制度

 電子公告の場合、紙としての証拠が残らないため、法務大臣の登録機関である調査機関の調査を受けなければなりません(商法457条)。調査機関はその公告の有無を調査し、公告掲載終了後に書面などで当該会社に結果を通知することになります。調査機関はその結果を利害関係者が閲覧できるように保存しておくことが必要になります。
 電子公告調査機関は民間業者とされ、法務大臣によって登録されることが必要となります。業務内容としては、調査の実施、調査結果の通知義務、帳簿の作成・保存・開示を行うことになります。なお、調査機関は3年以内の更新とされています(商法461条)。
 2005年1月の法律(及びその規則)が施行される直前の状態では、調査機関はまだ登録されていませんが、登録申請の準備を進めている企業も存在するようです。調査機関が正式に決定されるのは2月以降で、官報で公示されることになっています。


2.債権者保護手続きの簡素化

 合併、会社分割、資本減少、準備金減少などによって会社債権者が不利になることを回避するため、会社は合併などを実施する前に債権者保護手続きを行う必要があります。具体的には、合併などに際して異議がある場合に、その旨を主張できる期間についての情報の公告や、最終の貸借対照表の特定事項の公告を示します。平成16年改正前は官報での公告に加え、「知れたる債権者」※3に対しては催告を行うことが要求されていましたが、改正により、官報の他に日刊時事新聞または電子公告を行えば、催告は必要ないということになりました。

※3「知れたる債権者」とは「催告者が誰であり、その債権がいかなる原因に基づくいかなる内容のものかの大体を会社が知っている債権者」(江頭憲治郎『株式会社・有限会社法 第3版』(有斐閣、2004年))と定義できます。

【参考文献・データ】
法務省ホームページ http://www.moj.go.jp/HOUAN/index.html
江頭憲治郎 『株式会社・有限会社法 第3版』(有斐閣、2004年)
関俊彦 『新訂版 会社法概論』(商事法務、2004年)